1998/06/24 01:38 まあ、生きてりゃそういう日もあるさ。
うむ、5:0。
確かにオランダは強いです。10回やったら1回勝てるかどうかすら自信持てないくらし、でも10回やってオランダが韓国を5:0で勝てる試合も1回あるかどうか、またはそれ以上でしょう。ボールは丸く、試合は試合はどうなるか分からないと良く言いますが、韓国は前者を期待し、結果は後者と出ただけです。まあ、そういう日もあるでしょう。だが、それがちょっと悪い時期に出ましたが。
サッカーの戦力を客観的に考えるファクターとしてテクニックや技術、身長や体格などの身体的能力、経験や実績から来る自信等を提げますが、それらのどれを見てもオランダは韓国の一枚も二枚も上です。
だが、それで挫折する事無くそれらを踏まえた上でどうしたら良いかを一緒に悩み、応援するのが真のサポーターというものでしょう。今度の試合はそれらを考えさせる良い機会でした。
もうそろそろ試合が終わってから三日になろうとする今、試合内の内容と試合外の話をしてみましょう。
直接的な敗因というか切っ掛けは(そういうのを論ずる前に実力での完敗でしたが)チェ・ヨンスの警告と先取点でしょう。少なくとも私はそう思います。
まず出始めの展開はこの前のメキシコ戦と殆ど代わらないものでしたが、相手がオランダというのを考えれば悪くなかったですね。ちょっと攻撃が巧く行かなかったり、守備で危ない場面を迎えることも何回かありましたが、それは強チームと戦う時の宿命というか愛嬌と見ても良いでしょう。^^;。
守備としては相変わらずホン・ミョンボのプレイが冴えてたし、前回は出なかったキャプテンチェ・ヨンイルも身を投げて良い守備をやってくれましたね。
攻撃が円滑にならなかったのはチェ・ヨンスが巧く守備を離せなかったのもありましたが、イ・サンユンの動きの悪さに起因したと思います。今まで何度も韓国代表の危機を切り開いてくれた彼でしたが、ワールドカップの大舞台で緊張したのかこの前の試合から何度も大事な場面で攻撃の脈を切る事になりました。正直彼は走るタイプの選手ではなく、相手の守備が厚く、試合が固まった時のキーとして作用する選手だったので守ってカウンターという戦略のワールドカップ本線でのスターターとしてはどこか合わない所があったんでしょう。
試合の流れが決定的に変わったのは前半30分ぐらいからです。相手のゴールから大体35メートルか40メートルくらいの所でフリーキックのチャンスを迎えたんですが、いつもならこの距離での韓国チームはゴールエリアーに向けて遠いセンターリングを上げチェ・ヨンス等の頭を使うポストプレイを使い、またそのキックが結構高い精度を持ち、これは韓国チームの武器の一つだった筈ですが、相手の守備の背が高いせいなのか、それともチェ・ヨンスが今まで殆どボールにタッチしたことが無くシュートのリズムを失ってはならないと判断したのかチェ・ヨンスで直接行きましたね。
正直あの距離で決められるプレイヤーは韓国だけでなく世界中探してもそうそう居ない筈ですが。^^;。まあ、とにかくそのプレイですが、思いも寄らない事が起きましたね。チェ・ヨンスが遅延行為で警告を受けたのです。これは警告自体より非常に深刻な自体を起こしました。恐らくその時ピッチに立ってるイレブンの頭にはこの前ハ・ソクジュが退場されて負けた此間の試合が思い浮かんだことでしょう。
それから守備が崩れ始めました。正直テクニック、フィジカル・コンタクト、組織力のどれをとっても勝てない韓国を今まで持たせたのはその闘志であり、ファウルとかそれぎりぎりのプレイ無くはオランダの攻撃を止めるのは物凄く難しいことの筈でしたからね。
守備の選手たちが思いっきり相手の選手に向かって行かなくなったから試合は完璧にオランダのフェースになりました。それからもうすぐ取られた先取点は大きかったですね。
だが、その瞬間までは選手たちにはまだ闘志が残ってました。怯まず即刻攻撃に出ましたね。またホン・ミョンボが攻撃に上がることになり、いつもの弱点が出始めました。結局コナーキックからのプレイにホン・ミョンボまでが上がって守備3人だけを残した攻撃で3:3のカウンターを受け追加点を許しました。
この2点目は色んな意味で大きかったですね。選手たちの闘志がまだ残っていてまだ負けてないと思ってる時期に時間良く出たということと、その取られ方がいかにも韓国の持ってる弱点をつけられた形で出た事。これから3点を返さないと勝ちはないという場面でオランダという相手の名前等。
そういう状況で前半が終わり、もしここでチャ監督が守備を固めこれ以上失点をしない戦術を使ったら恐らく試合は2:0か3:0で終わったでしょう。それに彼の首も繋がったでしょう。オランダに2:0で負けたとして責める人は殆ど居ないでしょうからね。
しかし、彼はそれをやらなかったし、私もそれは正しかったと思います。「強豪オランダと戦って良く守ったが2:0。負けたが良い試合だった。」の結果を残す事は出来たでしょう。だが、それは勝ちの確率を完全に捨て恥をかかずに済もうとするだけの行為です。村上龍に言わせれば本土決戦をしないで降伏したような事ですね。
結局彼はその確率が限りなく低くても「勝つ試合」をしに行き、結局敗れました。動きが悪く速攻のリズムを切っていたイ・サンユンを交代させ、ホン・ミョンボを攻撃に上げ、また新しい若いストライカーイ・ドングックを投入し点を取りに行きました。
だが、もう調子に乗ったオランダはもう韓国の弱点を見破っていたし、余裕を持った強者というのはもっと強くなるというのが自然の摂理の様に結果は最悪の方にでてしまいました。余裕あるオランダの守備はただ我武者羅になって攻撃に向かうだけの韓国攻撃陣を簡単に払い、速攻に繋ぎ、大量得点を挙げました。この日のオランダは最高のプレイをしましたね。勝てる時にはそういう余裕を、負けてる時にはまだ勝てるという余裕を持っててこそ強チームという事です。気合で負けた時、試合はもう負けだという観点から見ればこの試合は2点目が入った時既に負けた試合かも知りませんね。その時まだ負けてないと思ったのが選手達じゃなくて監督だけだったのが問題だったんでしょうか。
正直後半の韓国のプレイはただ攻撃に行こうと言う意識だけが表れ戦術もテクニックも何もないまるで子供のサッカーみたいな感じでした。選手たちが混乱し、監督の支持に従うのが出来なくなったのか、それとも監督までも混乱し何の戦略も無くただ攻撃の数を増やしただけなのかは、その場にあった本人達だけにしか分からないことでしょう。
結局、結果は64年どっかのチームと戦って10:0でまけた以来、実に30年以上ぶりの韓国代表チームの5点差以上の零敗という悲惨なものでした。
今度は試合の流れとは関係無く実力的な所を少し。
まず今度の韓国代表がアジアで今まで勝って来た武器というのはスピードと体力を生かしたフィジカル・コンタクト、それと高さでした。勿論世界の目から見れば取るに足り無いものかも知りませんが、どのチームと戦ってもあの三つの内少なくとも一つは生かせるというのが今までの韓国チームの基礎というか自信の元だったんですね。
それがオランダはどれを取っても韓国より上でした。こういう事は正直初めてでした。まず、スピードで個々のプレイヤーのスピードだけなら決して負けなかったと思います。ただそれがパスを繋げながらの2:2、3:3でのスピードで比べればオランダの方が遥かに上でした。特にイ・サンユンの繋ぎの悪さが痛かったです。
それと最後に韓国の得点の鍵となったのはゴール周辺でのフィジカル・コンタクトの強さや高さを生かしての良いポジジョン取りだったんですが、高さでは比較するまでもないくらいオランダが高かったし、当たりでもオランダの方が遥かに強かったですね。全然ポジションが取れませんでした。元々はそれをかわす個人技が要求されるのですが、それまで韓国が持っていたら恐らくワールドカップで既に何勝かは挙げてるでしょう。
これからはいつも腹を立たさせる試合外の話を。興奮してるのでここからは敬語無しです。^^;。
まずは今度も出た言論の無責任さから。ワールドカップブームを無理に作ろうとし、メキシコ、オランダ、ベルギーという厳しい相手と同じ組になったのを殆ど気にもせず、勝てる!とか16強問題無し!などのデタラメを毎日放送で流し、負けの衝撃を増大させおいて、負けた途端これはみんな闘志が足りなかった選手達のせいだとか、監督のミスだとか一斉に騒ぎ出すあいつらは一体何なんだ。
てめえら、本当に相手とか試合の流れを考えながら試合を見た事が一度でもあんのか。まともに相手を分析しようともせずにただ勝てると騒ぎ出し、殆どの国民をその気にさせといて負けたら今度は懸命に戦った監督のせいにするなんて。いっそう罪も無いオランダやメキシコの悪口でも放送した方が何百倍もましだ。
チャ監督更迭の件もそうだ。一体あの人に何の罪があるというのだ。そりゃ俺だって偶にはチャ監督の選手運用等で不満を述べる事があるが、それはもっと良くなろうという気持ちからなんだ。だが、てめえらが言ってるのはただ負けたから代えろという事だけだろう。5:0で負けたなんて恥ずかしいとか誰かに責任をぶつけ様としてるだけだろう。俺も5:0で負けたのは悔しいが恥ずかしくはないぞ。もっと恥ずかしいのはお前らなんかと同じ国民だということだ。
一体今監督を代えてどうなる。あの人が監督になった時の韓国代表チームを覚えてるか?あれは酷かったもんだぞ。チャ監督がいたからあのチームをここまでにしてワールドカップに出られたんだ。なのにそれをここで負けたからって手交代だなんて。てめえみたいな連中がこの前日本に負けたらチャ監督代えろ!なんて叫ぶのだ。それにその度々いつも監督が代わってしまうから、その度々韓国チームの実力が逆戻りするんだぞ。それをもう何十年やったと思う。
最後に、チャ監督は最後まで自分からは辞退を申し上げず、上からの懲罰で首になる形でチームを離されました。彼は辞退意思を示す事は簡単だが、そうして断罪され責任を果たしかったと言いました。大きな罪を犯してそれを断罪されるのが怖くて先に自分から逃げ出す事が多い現代の中で彼のその精神は本当のプロの言葉の様に聞こえました。
彼も言ったように彼はまだ監督としては若くまた使われる事もあるでしょう。それまでにもっと他の人々が成長していれば良いんですが。
何はともあれ韓国代表はまだ一試合が残っていて、ワールドカップ1勝の機会はまだ残ってます。そのチャンスすら持てなかったチームが世界には数え切れない程ありますからね。
色々大変なことになっていますが、16強のプレッシャーも、言論の騒ぎも無くなった(無くなるか?)今彼らが自分で後悔の残らない良いプレイが出来て帰って来られるんなら、私はファンの一人として凄く嬉しい事でしょう。
頑張れ!韓国代表。
Home |